オススメ本 よいこの君主論


よいこの君主論 (ちくま文庫)
筑摩書房
架神 恭介

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 君主論の内容を、小学生がクラスの覇権を握るために争うという物語の形式で説明した一作。

 表紙やタイトルのネタっぽさに惹かれて読んでみたら、すごくしっかりした内容で驚きました。
 君主論を実用の書として用いようと思うのであれば、本家を読まずとも、こっちだけ読めば充分かもしれません。それこそ物語形式になっているおかげで、マキャヴェリが説かんとしたことがスムーズに頭に入ってきますし。本家は当時のイタリアの有名人等をよくたとえに用いているので、現代の日本人が読むといまいちピンと来なかったりする可能性もありますしね。

 しかし、「もしドラ」もそうですが、いわゆる教訓的な内容の本は、物語形式にすることでかくもわかりやすくなるんですね。もちろん物語としての質そのものも問われるんでしょうけど。
「習うより慣れろ」といいます。物語を読んで感情移入することで、読者は「慣れろ」の部分をシミュレーションとして経験できる、ということでしょうか。

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 本書のおかげで君主論の面白さを知ることができたとともに、この視点でもって、たとえば三国志とかを改めて見てみるのも面白そうだな、と思えました。
 たとえば、各群雄を本書の第1章に基づいて分類してみると。

新興の君主
 劉備、曹操(?)、孫堅(?)、董卓など

聖職者による君主制
 なし(漢の帝は実権を握ってなかったので)

世襲君主
 袁紹、袁術、劉璋、その他三国の跡継ぎたち

他人の軍備に頼った君主
 劉備(徐州時代)、劉表(?)

 僕の知識も結構いい加減なので当てになりませんが、多分こんなところでしょうか。
 劉備は皇室の血を引くとかいっても、実際には最下層から這い上がってきた人間なので「新興の君主」になります。ただし徐州時代には、陶謙という他人に国を譲られてますので、「他人の軍備に頼った君主」になるかと。だからあっさりつぶれちゃったんですかね。

 曹操や孫堅は、先祖伝来の土地や家臣と呼べるほどのものってあったんだっけ? 曖昧なので、とりあえず新興君主の枠に入れときました。
 名族の袁兄弟は、多分世襲君主になるんでしょう。劉璋は親父から土地を引き継いでますし、劉禅や曹丕、孫権なども無論これに当たります(孫策は「他人の軍備に頼」りながらもうまく成功した例なのかな)。

 劉表についてはうろ覚えですが、地元の有力者だった蔡瑁の一族と結婚して地盤を固めたと同時に、その蔡一族に振り回されるようなはめになっちゃったんで、「他人の~」に当たるかと。

 んで、たとえば世襲君主で言えば、劉禅なんかは孔明亡き後も含めて意外とよく国を保たせたことで知られてますね。
 君主論によれば、世襲君主が失敗するのは、以前からの慣習をむやみに変えようとするせいだとか。劉禅は劉備や孔明の残したものに手をつけず、全部そのままでやってきたから、かえってうまくいったのかもしれません。これが下手にやる気を出して、国内の改革とかやろうとしてたら、もっと早くにつぶれてたかも。

 劉璋が無能と呼ばれながらも、劉備の侵攻に対して結構あらがえたのも、世襲君主の強さと言えるのかも。
 その代わり、劉備が勝った後は劉璋の臣下の多くがそのまま劉備に鞍替えしたというのも、君主論の言う通りといえば言う通り。劉備は劉璋を殺しこそしなかったものの、なんの実権も持たせなかったおかげで、その後の憂いはなし。

 きりがないんでこのへんでやめておきます。ま、こういう想像を遊ばせられるという意味でも、この本はオススメ、ということで。

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