感想 「みんなの意見」は案外正しい ~そうか、2chって~



 この本が面白かったので、感想を。

 本書の趣旨は、少数の専門家が下した判断よりも、大勢の意見を集約した判断のほうが正しい、というものです。ただし、以下の条件を満たす場合において。

・みんなが自分自身の意見を持っている。

・自分の意見が他人によってゆがめられることがない。

・「みんな」の内訳が多様である。

・みんなの持っている情報が、他の人間にきちんと伝わっている。


 つまり、自分で考えずに誰かの意見を鵜呑みにしたり、他人の顔色を気にして自分の意見を引っ込めたり、意見を述べるメンバーが似たもの同士だったり、自分の持っている情報を他人に隠してたりした場合は、みんなの意見というやつは信用できないものになる、ということです。
 逆に言えば、このトラップにさえ陥らなければ、みんなの意見は、1人の秀才が下した判断よりも当てになるのだとか。

 大衆は、具体的な選択肢を示せば、案外正しい判断が下せるものだ――かのマキャヴェリが、こんなことを言っていたかと思います。本書の内容は、この意見を裏付けるものと言えるでしょうか。

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 本書が正しいという前提で考えてみると、以下のようなことを思いました。

2chは「正しい意見」を導く場としてはふさわしくない

 2chでのやりとりに限らず、対話や議論という行為そのものが、正しい意見を導き出すためにはふさわしくない、となります。なぜなら、他人の言うことに影響を受けて、自分の意見を変えてしまうから。
 他人の言うことも、1つの情報として扱う分にはもちろん構わないのでしょう。ただ、「俺の考えが正しいと思うけど、でも相手の言ってることのほうがもっともらしく聞こえるし、みんなもそっちが正しいって言ってるし」みたいな迷いが生じちゃうとダメということです。2chなんかは、そのスレという「場」の空気の影響が強く出ますから、多様な意見を抽出する場所としてはふさわしくありません。

 といっても、だから2chは無価値だ、と言いたいわけではありません。僕は元々、2chの価値は対話や議論ではなく、まとめwikiと雑談とネタにあると思っています。

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裁判員制度は、それなりに意味がある?

 僕が思っていた裁判員制度の問題点は、「いきなり呼び出されて数日間働くだけの裁判員が、プロの裁判官と同レベルの判断を下せるのか?」というものでした。
 でも、本書の理屈が正しいのであれば、裁判に関する経験不足などはデメリットにはなりません。むしろ、現行の裁判官には偏りがあるという意見から考えれば、民間人という異分子を取り込むメリットのほうが遥かにでかいのかも。

 ただ、それでも実際に裁判に臨めば、裁判員はプロの顔色をうかがうだけになるんじゃないかとか、場の空気に呑まれて自分自身の意見を放棄するんじゃないかとかいう懸念があります。マスコミが、裁判取材させろや、とか言ってもいるみたいですし。世間の目というやつを強く意識してしまうようになると、自分自身の意見は、ますます飛んでしまいがちです。
 それこそ本書の理屈から言えば、マスコミの取材によって国民に情報が広く行き渡り、個々人の意見が反映されるようになれば万々歳――なのですが。こううまくいくかどうかは、取材の仕方や、意見を集約させるシステムがうまく作れるかによるでしょうね。裁判が単なるショウになってはダメですし、結局裁判官が全部判断してんじゃん、となってもダメなわけです。

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