薔薇色にチェリースカ 1巻感想

 面白かった。次も買う。
 ただ、それはそれとして、引っかかるところもあった。
 真希を除く登場人物に、心の葛藤が見えないことだ。

 フィクションにおいて、主人公が異性から簡単に好意を寄せられることは、別に珍しくはない。僕も、そういう展開が嫌いというわけではないはずだ。
 ただ、チェリースカがヒロになじむ様、心を開く様には、ご都合主義的な甘さを感じる。
 その理由は、ヒロという主人公に、いまいち感情移入できていないことにある気がする。
 ヒロは、ダブルヒロインの一人である真希に比べ、明らかにキャラが弱い。真希のほうがよっぽど主人公らしい。

 ヒロに限らず、他の登場人物たち――メインと呼べるのはヒロに真希、チェリースカにアイスヒルの4人だが、真希以外のキャラはいまいち弱い。
 チェリースカはまだ存在自体が謎だから置いておくとして、問題はアイスヒルだ。

 敵方のパーフェクトレディ。高慢さの権化。
 アイスヒルは、設定としてはかなりおいしいキャラのはずなのに、実際にはあまり魅力を感じない。
 その最大の理由は、心の弱さが見えないことだろう。
 これは、別にアイスヒルが強靭な心根の持ち主である、ということではない。強靭というより、単に鈍感なだけに思える。
 アイスヒルだけに限らず、この作品の登場人物は、人を傷つける、おとしめる、場合によっては殺すということに対し、あまりに葛藤を抱かなすぎる。正負どちらの方向であれ、心の激しい動きが見られない。

 これは、ヒロにあまり魅力を感じない理由にも通ずる。
 スパイである自分。周囲のほとんどの人間から嫌われている現状。そして、この21世紀の時代において、剣で命を狙われているという境遇。
 これだけきつい環境に置かれていながら、ヒロはさほど苦しんでいるように見えない。物理的には何度も殺されかけて大変ではあるが、心はいたって強靭だ。
 いや、上述のように、強靭というよりも鈍感なだけのように思える。

 タズサは、プロとしてのプレッシャー、自分への不信、リアとの圧倒的な力の差への絶望等、たくさんの葛藤を見せてくれた。
 チェリースカの登場人物たちが、このままたいした葛藤も見せずに単に斬りあうだけであれば、キャラとしての魅力において、タズサ一人にも勝てないかもしれない。次巻以降では、それぞれが心に抱えているものを、もっとあらわにしてくれることを願う。

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