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zoom RSS 妄想 東方儚月抄(ネタバレあり)

<<   作成日時 : 2013/06/20 02:04   >>

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 タイトル通り、儚月抄のネタバレがあります。
 あと、それ以外にも、東方知らない人にはなんのこっちゃ、な内容がたくさん含まれています。あしからず。

 んでいきなり結論を言ってしまうと、儚月抄という物語を一言で語るなら、『月の皆さん、幻想郷へようこそ! 八意永琳さんの歓迎サプライズパーティー 主催:八雲紫』だと思うのです。……はい、一言です。

 マンガ版と小説版を併せて読むと、ゆかりん大勝利な結論ではあります。
 ただ、だからといって単純に、紫の知略が永琳を上回ったのかというと、それはちょっと違うよな、とも思います。儚月抄におけるこの2人の違いは、知略の差というより、価値観の差によるところが大きそうなので。

 永琳──というより、おそらく月の民というのは基本的にそうなんだと思いますが、洗練された合理主義的な価値観の持ち主です。もちろんガチガチの合理主義者などではないにしても、少なくとも幻想郷の住人のような無茶苦茶さとは遠い。
 一方の八雲紫は、おそらく最も幻想郷らしい妖怪の一人です。その中でもまた極北を行っちゃってそうなので、単純に紫を「幻想郷らしい」と言っちゃうのも間違いでしょうが、ともかく、永琳のような月の民とはまるで違います。

 儚月抄における紫の目的をより簡潔に言ってしまうと、『永琳をビビらす』だったわけです。
 いや、ビビらしてどうすんだよ、というツッコミは当然あるでしょう。なぜそういう発想になるのかが理解できない、と。永琳もそうだったからこそ、紫が月への潜入などという無意味なことをなぜ企てたのかが最後まで理解できなかったわけですし、小説版のラストでは、「なにこれこわい」になっちゃったわけです。

 よく言われるように、怖さというのは、なによりも「理解できない」ことによるのが大きいのでしょう。なんか具合が悪くてビビりながら病院に行ったけど、適当な病名をつけられたらかえって安心しちゃった、みたいな。
 紫の価値観は合理的な精神とはまるでかけ離れて見えたために、永琳にはついに理解できなかった。おそらく儚月抄の物語終了後も、理解はできてないと思います。……そこを理解できるような変化が永琳に起こったとしたら、それはそれですごく面白そうではありますが。

☆★☆★☆

 なお、そもそも紫はなんで永琳をビビらす必要があったのか、について。
 小説本編でも書いてますし、基本そのまんまでいいとは思いますが、僕の想像等も交えて書いてみます。

 まず幻想郷という世界は、妖怪と人間のバランスによって保たれています。
 正確には、世界そのものは結界さえあれば保たれるらしいです。でも結界がなくなると、人間はともかく、妖怪はまともに生きていくことができなくなるでしょう。なので妖怪の視点からすれば、幻想郷という世界は絶対に必要なのです。

 なぜ幻想郷という世界がないと妖怪が生きていけないのか?
 それは、東方という作品における妖怪や神は、いずれも「人間に信じられること」によって存在できるようになっているからです。神の場合は「信仰されることによって」、妖怪の場合は「恐れられたり不気味がられたりすることによって」、その存在を認められ、力を持つことができます。

 しかし外の世界、つまり僕たちが生きる現代社会においては、神だの妖怪だのは「迷信」として片付けられるようになってしまいました。この辺りの事情は、東方求聞口授に書いてあります。
 風神録で守矢一家が幻想郷に引っ越してきたのも、外の世界だと神奈子&諏訪子がすっかり無視されて、このままだと消えちゃいそうだったからです。あと、ある意味大人気の秋姉妹なんかは、幻想郷でもあんまり信仰されてないせいで、妖怪とたいして変わらない野良神様呼ばわりされちゃってます。

 で、儚月抄本編によると、永琳や輝夜は人間として生きることを選んでいながら、人間としての義務を果たしていない。紫に言わせれば、納税をしていない。
 幻想郷の人間にとっての「納税」とは、つまり「妖怪を恐れること」である。なので、永琳たちが幻想郷で人間として生きていこうというのなら、きちんと税金を払ってもらいましょう、妖怪にビビってもらいましょう、というのが紫の思惑だった──のだと思います。

☆★☆★☆

 ここまでは本編に書いてあることを多少言い直しただけなので、極端に間違っていることはないでしょう。
 ここからは、僕の想像やら推測やら妄想やらが入ります。

 以上の説明に対して、ネット上でいくつか見つけたツッコミ。

・永琳は確かにビビらせたけど、輝夜はビビってないじゃん。

・そんなことのために月にケンカ売ったりして、幻想郷滅びたらどうするつもりだったの? 紫は。

 まず前者についての僕の考えは、ぶっちゃけ紫からすれば、輝夜なんざどうでもよかったんじゃないか、となります。事実上の永遠亭のボス、というか最高実力者は永琳ですし。
 一応理屈をつけると、「納税」ということで言えば、一家の長にまとめて払ってもらったってよいよね、と。あと、永琳は医者として幻想郷で仕事をしてますが、輝夜は月関係の博覧会を開いた以外は、仕事と言えるようなことは特になにもやってないみたいなので、納税対象者にはなってない、とも言えます。

 後者については、当然そんな危険はない、と確信した上で紫は行動していたでしょう。でなきゃ儚月抄の話そのものが破綻します。
 根拠は以下。

・紫は以前も月に攻め入ったことがあり、現在でも月に行く「だけ」なら簡単にできる。永琳が仕掛けた罠も知っていた。なので月の都に関する事情や、月の民の考え方に詳しくてもおかしくない。

・月の都も一枚岩ではない。儚月抄で月の権力者として出てきたのは綿月姉妹だが、2人は別に最高権力者ではない。むしろ罪人の永琳をいつまで経っても捕らえようとしないことから、上層部(?)からは疑われているっぽい。謀反の疑いとかもかけられたりしてるし。

・今回、幻想郷側が行ったことを月、というか綿月姉妹の視点から見れば、
「変なの(レミリア他)が数人来てケンカ売ってきたので追い返した」
「謀反の疑いをかけられたのは霊夢が原因、ていうか根本的には紫のせいだとわかったので、月の都での誤解は解けた」
「紫はまんまと八意様の策略に引っかかって土下座して縛られた。ざまあwww」
「と思ってたら酒を一本盗まれてた。ぎゃふん」
 つまりは酒を盗まれたことにむかつきはすれど、それ以上の大事にするような事態ではないわけです。上述のように、綿月姉妹は月の中でもにらまれてる存在っぽいので、「酒盗まれてむかついたんで地上行ってきます」と気軽に動くわけにはいかないでしょう。

・そもそも尊敬している永琳が幻想郷に隠れ住んでいると知っている以上、その幻想郷を滅ぼすようなマネを綿月姉妹がするはずがありません。

☆★☆★☆

 さらに、妄想を追加。
 紫はかつて(千年以上前。漫画版儚月抄では藍が「数百年前」と言ってるが、他の描写から見て、多分前者のほうが正しい)妖怪軍団を率いて月に攻め込んだものの、綿月姉妹に惨敗したそうです。

 しかしこの事件について、求聞史紀の記述にはこうあります。()内は僕の補足。
「(紫は)増長した妖怪を集めて(月に攻め)行ったが、月の近代兵器の前にあえなく惨敗する。これ以来、妖怪達は自分のテリトリーを越えて攻め入る事は少なくなったと言われる」

 この記述を読むと、「増長した妖怪」とは紫が率いた妖怪たちのことを指しており、紫本人のこととはなっていません。
 また結果的には、この敗戦によって「増長した妖怪」たちは身の程を知るようになったらしいです。

 そもそも、「敵を知り己を知れば(ry」なわけで、紫ほどの妖怪が、勝てるはずのないケンカをわざわざ仕掛けるか? という疑問があります。
 単なる敵情調査だけなら、戦争を始める前に、紫の能力でいくらでもできます。紫の存在が月に知られるのは、この第一次月面戦争がきっかけなので、それ以前ならこっそり月を調べるのも今(儚月抄)以上に楽だったはずです。

 以上より、次の仮説を思いつきました。
 紫は妖怪たちの増長を戒めるために、あえて負けるとわかっている戦を仕掛けた。その結果、妖怪たちはおとなしくなり、今後訪れたかもしれない致命的な破滅を避けることができた。これが千年前の第一次月面戦争における、紫の真の狙いだったのではないか、と。

 このとき、妖怪側と月側とにそれぞれどの程度の犠牲が出たのかは不明です。
 でも妖怪側が惨敗したと書かれている以上、月側からすれば、微々たる損害でしかなかったのでしょう。ひょっとすると兎の一匹すらやられなかった可能性もあります。

 そして、この戦争の後でさえ、妖怪側のボスである紫は月の民に殺されることもなく、普通に生きています。
 ついでに、竹取物語=輝夜と永琳が地上で逃亡生活を始めた時代は、大体西暦700年ぐらいらしいです。とすると、第一次月面戦争は、竹取の時代よりは後の話となるのでしょうか? なんにせよ、輝夜と永琳が普通に幻想郷入りしていることを見ても、月面戦争に負けたせいで地上が大変なことになった、みたいな話もどうやらなさそうです。

 つまり、月の民は基本的に地上の人間や妖怪をむやみに殺したりはしない、と第一次月面戦争の時点で紫は理解していたことになります。
 おそらくは戦う前からそう予測をつけており、だからこそケンカを売ることができたのでしょう。月の民は、生と死が強く結びつく世界を「穢れ」として忌み嫌っているので、月での殺しはなるべく避けるでしょうし。ろくな被害も受けてないのであれば、「罪人の住む牢獄」である地上へわざわざ報復に出る理由もありません。

 そして儚月抄で行われた第二次月面戦争(笑)は、第一次よりもはるかに地味で、深刻さに欠ける出来事でした。
 なので、こんなことで幻想郷がつぶされることなどあり得ないし、自分も含め、幻想郷の誰かが犠牲になることもない、と紫は確信していたものと思います。

☆★☆★☆

 さらに言うと、じゃあ紫は幻想郷のためだけを思って行動していたのかというと、それも違う、と僕は思っています。
 ハッキリ言って、第一次で負けた綿月姉妹に対するリベンジ、という思いもあったでしょう。漫画版儚月抄の最終話で、「久しぶりの大勝利よ! 最近いいことほとんどなかったから」と、素敵な笑顔でおっしゃってますし。

 つまり儚月抄における紫の思惑をまとめると、

・永琳に「人間として」ビビってもらおう。輝夜はまあどうでもいいや。
・せっかくだから綿月姉妹へのリベンジもやっちゃおう。幻想郷の危機? ないない。

 こんだけじゃないかと。
 ……え、そんだけのために漫画3冊&小説1冊を使ったのかって? いや、東方ならそんなもんじゃないすかね。

☆★☆★☆

 おまけ。

・小説版の最終話で、「(酒に)毒は入ってないわ」と紫が何度も言ってたことの意味がわからなかったんですが、さっき不意に気づきました。毒=穢れ、ってことだったんですね、多分。
 永琳が酒を受け取って「有難う」と言ったのに対し、紫が「失礼ね。毒なんて入っていないわ」と言ったのは、「これは毒=地上の穢れの入ったお酒だと思ってるでしょうけど違いますよ」という諧謔だったんじゃないかと思います。

・妖怪は人間に恐れられることで力を増す、という理屈で言えば、永琳にビビられると紫のパワーは相当増すんじゃね? という妄想がさっき浮かびました。ただ、紫の目的はそこにあったというのはちょっと違う気がしますし、美しくないので却下します。

・なんか紫の動機論ばかりになっちゃいましたけど、儚月抄について語りたいことは他にもあります。漫画版の藍の笑顔が実に胡散臭くて素敵だとか、ラストの紫の笑顔もそんな感じだったんだろうなとか、射命丸の「これはそろそろ新しい巫女を〜」の最後のコマがちょっと寂しそうだった+霊夢が帰ってきた途端いい笑顔で飛んできたとことか。

☆★☆★☆

 小説版で最も印象的だったシーンの1つは、最後の霊夢と輝夜のやり取りです。

 今後、寿命が延びたら人間はなにを望むようになるのかという輝夜の問いかけに対し、「寿命を減らす技術が発達するんじゃない? 心が腐っても生き続ける事の無いように」と答える霊夢。
 このセリフ自体がちょっとすごいですし、この答えに輝夜が驚くという展開も、妖怪にビビるのが人間の払う税金、という理論と併せて考えることで、ああ、と感心させられます。

 またこの小説版では、心を腐らせながら生き続けた妹紅の話も書かれています。そもそも妹紅、そして輝夜と永琳は不老不死なので、心が腐ろうがどうなろうが、生き続けるしかありません。
 心が腐るとはどういうことでしょうか? たとえば、何事にも感動しなくなったり、驚いたりしなくなったら、その心は腐ってしまっていると思います。

 しかしラストで永琳は、紫が出した酒と笑顔によって、「忘れる事の出来ない不気味さ」「死ぬ事のない者へ与える、生きる事を意味する悩み。正体の判らない者への恐怖」を受け取っています。「それが八雲紫の考えた第二次月面戦争の正体だった」という文で、小説版は終わっています。
 ということは、永琳は紫によって「生」を与えられた、とも解釈できます。言い換えれば、心が腐るのを防がれた、とも。

 また妹紅は同じく不死である宿敵の輝夜と再会し、殺し合うことができるようになって、心を取り戻しました。
 その妹紅の物語には、「(もし妹紅が不死になっていなかったら)同じく不死の人間が孤独な思いをしていたであろう」という一文があります。これをそのまま受け取れば、輝夜も妹紅と再会できたからこそ救われたのだ、と取れます(でも輝夜には永琳がいるじゃん、とは思いますけど、まあそれはそれとして)。

 そう考えると、輝夜はすでに妹紅という宿敵の存在もあって? 不死でありながら、しっかりと生きていた。そもそも、博覧会だの盆栽育てだのと、生きることを楽しもうという努力はすでにしていました。
 一方、永琳にはそれがなかった。だから紫は輝夜ではなく、永琳にのみ恐怖を送った。幻想郷で生きる者として、「人間」として歓迎するために──という考えが、今書いてて浮かびました。

 おまけのつもりで思いつくままに書いてたら、自分でもビックリの新発見、新解釈に出会えました。しかもなんか、きれいな解釈だし。東方っぽい感じもするし。
 これが合ってるかどうかは知りませんけど、僕はもうこれを儚月抄の真相ということに、自分の中では決めちゃいます。いやー、ブログやってると何度も経験しますが、実際に書いてみることで初めて見えてくる考えとか発見ってのはあるもんですね。

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